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'''アーチ式コンクリートダム''' (Concrete Arch Dam, ''CAD'') は、主に[[コンクリート]]を主要材料として使用し、[[アーチ]]止水壁にかかる[[水圧]]を両側面の岩盤で支える型式の[[ダム]]。上空から眺めると河川を横断する堤体が弧を描くように見える。略して'''アーチダム'''ともいう。
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<nowiki>'''アーチ式コンクリートダム''' (Concrete Arch Dam, ''CAD'') は、主に[[コンクリート]]を主要材料として使用し、[[アーチ]]止水壁にかかる[[水圧]]を両側面の岩盤で支える型式の[[ダム]]。上空から眺めると河川を横断する堤体が弧を描くように見える。略して'''アーチダム'''ともいう。
  
 
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2018年12月16日 (日) 19:26時点における版

'''アーチ式コンクリートダム''' (Concrete Arch Dam, ''CAD'') は、主に[[コンクリート]]を主要材料として使用し、[[アーチ]]止水壁にかかる[[水圧]]を両側面の岩盤で支える型式の[[ダム]]。上空から眺めると河川を横断する堤体が弧を描くように見える。略して'''アーチダム'''ともいう。 == 特徴 == [[ファイル:img barrage voute.jpg|thumb|200px|right|アーチ式コンクリートダムの断面模式図]] アーチダムには様々な亜型があるが、最も多いのは下流側に湾曲した'''ドーム型アーチ式コンクリートダム'''である。形状が複雑で設計が難しいが、最も少ないコンクリートの量で建設でき、これが現在まで続く主流のアーチ式コンクリートダムの基本形となっている。このほかにも'''[[放物線]]アーチダム'''や湾曲していない'''円筒型アーチダム'''などがある。派生した型式として[[カナダ]]のダニエルジョンソンダムや日本の[[豊稔池ダム]]などで採用された複数のアーチが連なる[[マルチプルアーチダム]]や、[[ロシア]]の[[サヤノシュシェンスカヤダム]]、[[アメリカ]]の[[フーバーダム]]などで採用された重力式コンクリートダムの特徴を併せ持った[[重力式アーチダム]]がある。 アーチダムはコンクリートの使用量が少なく済み、[[重力式コンクリートダム]]に比べて工費圧縮が可能で経済性に優れる。反面重力ダムのようにダム自体の重量を利用して貯水池の[[水圧]]によるダムを転倒させる力に対抗することが難しい。このためダムに掛かる水圧をアーチで湾曲させることで両側山腹の岩盤に圧力を分散させて水圧に耐える構造となっている。従ってアーチダムを建設するには莫大な水圧に耐えられるだけの'''強固な両側基礎岩盤の存在'''が絶対条件であり、建設可能な地点は限定される。[[フランス]]の[[マルパッセダム]]決壊事故では、基礎岩盤の強度が不十分であったことで試験的に貯水する試験湛水の最中にダムが水圧に耐えられず、岩盤もろともダム堤体が崩壊し大惨事を招いた。マルパッセダム事故はアーチダム施工に大きな影響を与え、日本でも[[黒部ダム]]においてダムを補強するため両側に'''ウイング'''を設けて水圧に耐えられるようにした。 洪水吐き(こうずいばき)については、ほとんどのアーチダムに常用洪水吐き(非洪水時・小規模の洪水時の放流設備)が備えられており、ダム堤体中央部に単独または複数の[[水門|ゲート]]を設置し放流を行う。[[スキージャンプ (ダム)|スキージャンプ]]式の洪水吐きをダム両側に備えるもの、ロックフィルダムのように山腹に洪水吐きを設けダム自体は洪水吐きを設けない非越流型もある。また、非常用洪水吐きについては自然越流・ゲート放流を含め中央越流型洪水吐きが多く採用されている。 また、多くのアーチ式コンクリートダム堤体下流側の表面には巡視路が設けられている。これは'''キャットウォーク'''と呼ばれる。ちなみにロックフィルダムにおける巡視路は「[[犬走り]]」と呼ばれる。 == 世界のアーチダム == 古くから[[ヨーロッパ]]などで建設され、中世、[[スペイン]]に建設された'''アリカンテダム'''は300年間堤高世界一の記録が破られなかったという話が残されている。現在世界的に堤高の高いダム(200.0 [[メートル|m]] 以上)ではこの型式が採用されていることが多く、特に[[アルプス山脈|アルプス]]を抱える[[スイス]]を始め、[[イラン]]や[[トルコ]]など[[中近東]]に建設されている例が多い。特にスイスについては、堤高 100 m を超えるダムの大半がアーチダムである([http://www.swissdams.ch/swisscod/Dams/damList/default_e.asp 参考1])。 現在既設ダムで最も高いダムは[[グルジア]]の'''イングリダム'''であるが、[[中華人民共和国|中国]]で建設されている[[メコン川]]上流の'''小湾ダム'''(シャオワンダム)が完成すると、世界で最も高くなる。また、世界で最も総貯水容量が大きい'''カリバダム'''([[ジンバブエ]]・[[ザンビア]])もアーチダムであり、その総貯水容量は約1,806億 [[トン|t]] を有し[[琵琶湖]]の約68倍の容量を誇る。 {| class="wikitable" style="text-align:center; font-size:85%;" |- !堤高<br />順位 !国名 !ダム名 !堤高<br />(m) !総貯水<br />容量<br />(千[[立方メートル|m³]]) !完成年 !備考 |-style="background-color:#ff9;" |1位 |[[中華人民共和国|中国]] |小湾ダム |292.0 |style="text-align:right;"|15,100,000 |- |建設中 |- |2位 |[[グルジア]] |イングリダム |272.0 |style="text-align:right;"|1,100,000 |[[1980年]] |  |- |3位 |[[スイス]] |モーボアソンダム |250.0 |style="text-align:right;"|211,500 |[[1957年]] |  |-style="background-color:#ebf;" |(参考) |[[イタリア]] |[[バイオントダム]] |262.0 |style="text-align:right;"|168,000 |[[1960年]] |[[地すべり]]事故後、放棄 |} == 日本のアーチダム == [[ファイル:Kurobe Dam survey.jpg|thumb|300px|right|日本一の高さを誇る[[黒部ダム]]([[黒部川]])]] ''日本に建設されている全てのアーチダムについては、'''[[日本のアーチダム一覧]]'''を参照のこと''。 [[日本]]では[[島根県]]の'''[[三成ダム]]'''([[斐伊川]])が[[河川法]]上の規定によるダムとしては最初のアーチ式コンクリートダムであるが、大正時代に旧・武蔵水力電気([[東京電力]]の前身の一つ)が[[埼玉県]]に建設した浦山堰堤(堤高 14.0 m。現在は[[浦山ダム]]に水没)が日本初のアーチ状堰堤建設例とも言われている。小堰堤まで含めれば[[青森県]]にある[[旧海軍大湊要港部水源地堰堤]]が、現存する最古のアーチダムということになる。大規模なアーチダムについては土木技術が未発達であったことで、多発する[[地震]]や[[集中豪雨]]・[[台風]]時の[[洪水]]処理に対する安全性の不安があって戦前は施工されなかった。 日本で最初の高さ 100 m を越える大規模アーチダムは[[宮崎県]]の'''[[上椎葉ダム]]'''([[耳川]])である。現在のアーチ式コンクリートダムで見られるオーバーハングした[[三次元]]的形状が取り入れられた最初のアーチ式コンクリートダムは[[和歌山県]]の[[殿山ダム]]([[日置川]])が最初である。その後アーチダムの研究が活発化するに連れ盛んに建設されるようになり、[[1963年]](昭和38年)に完成した'''黒部ダム'''は日本最大のダムとして、[[日本のダムの歴史]]に燦然と輝いている。ダムの形状としては美しい外観を有していることから、黒部ダムや[[温井ダム]](滝山川)、[[豊平峡ダム]]([[豊平川]])などのように観光地化しているダムも多い。 強固な岩盤を有する[[峡谷]]に建設されることから、[[犀川 (長野県)|犀川]]や[[鬼怒川]]の様に同一河川に集中して建設されている例もある。近年は建設に適する地点が極めて少なくなり、[[2001年]](平成13年)に完成した[[新潟県]]の奥三面ダム([[三面川]])の後は完成例がない。[[熊本県]]の[[川辺川ダム]]([[川辺川]])が計画されているアーチダムとしては唯一となるが中止の公算が大きいことから、今後この型式で建設される可能性は極めて少ない。 ===主なダム=== {| class="wikitable" style="text-align:center; font-size:small;" |- !所在地 !水系名 !一次<br />支川名<br />(本川) !二次<br />支川名 !三次<br />支川名 !ダム名 !堤高<br />(m) !総貯水<br />容量<br />(千m³) !管理主体 !備考 |- |[[富山県]] |[[黒部川]] |黒部川 |- |- |[[黒部ダム]] |186.0 |style="text-align:right;"|199,285 |[[関西電力]] |堤高日本一 |- |[[広島県]] |[[太田川]] |滝山川 |- |- |[[温井ダム]] |156.0 |style="text-align:right;"|82,000 |[[国土交通省]] |  |- |[[長野県]] |[[信濃川]] |[[犀川 (長野県)|犀川]] |- |- |[[奈川渡ダム]] |155.0 |style="text-align:right;"|123,000 |[[東京電力]] |  |- |[[栃木県]] |[[利根川]] |[[鬼怒川]] |- |- |[[川治ダム]] |140.0 |style="text-align:right;"|83,000 |国土交通省 |  |- |[[岐阜県]] |[[木曽川]] |[[飛騨川]] |- |- |[[高根第一ダム]] |133.0 |style="text-align:right;"|43,568 |[[中部電力]] |  |- |[[群馬県]] |利根川 |利根川 |- |- |[[矢木沢ダム]] |131.0 |style="text-align:right;"|204,300 |[[水資源機構]] |  |- |[[宮崎県]] |[[一ツ瀬川]] |一ツ瀬川 |- |- |[[一ツ瀬ダム]] |130.0 |style="text-align:right;"|261,315 |[[九州電力]] |  |- |[[福井県]] |[[九頭竜川]] |真名川 |- |- |[[真名川ダム]] |127.5 |style="text-align:right;"|115,000 |国土交通省 |  |- |栃木県 |利根川 |鬼怒川 |- |- |[[川俣ダム]] |117.0 |style="text-align:right;"|87,600 |国土交通省 |  |- |[[愛知県]] |[[天竜川]] |大千瀬川 |大入川 |- |[[新豊根ダム]] |116.5 |style="text-align:right;"|53,500 |国土交通省<br />[[電源開発]] |  |} ==関連項目== *[[ダム]] *[[コンクリートダム]] *[[重力式アーチダム]] *[[マルチプルアーチダム]] *[[日本のアーチダム一覧]] *[[アーチ]] *[[放物線]] *[[ドーム]] [[Category:アーチ式コンクリートダム|*]]