持株会社

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持株会社(もちかぶがいしゃ)とは、他の株式会社を支配する目的で、その会社の株式を保有する会社を指す。ホールディングカンパニー(Holding=保持、保有)とも呼ぶ。

私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(独占禁止法。以下「独禁法」)では、「子会社の株式の取得価額(最終の貸借対照表において別に付した価額があるときは、その価額)の合計額の、当該会社の総資産の額に対する割合が百分の五十を超える会社」を持株会社と定義している。

概説[編集]

本業を行う一方で、他の会社を支配するものを事業持株会社、他の会社の支配を本業とするものを純粋持株会社と呼ぶが、一般に「持株会社」といったときは後者を指す[1]。後述の抜殻方式で持株会社化したときにほんの一部でも事業が残っている(残さざるを得ない)場合は純粋持株会社と呼ばないことがある。

また、持株会社の傘下で、似通った事業を行う子会社を束ねる「中間持株会社」と呼ばれる形態もある(ソフトバンク株式会社などが採用している)。

「A株式会社」と「B株式会社」を経営統合させ、その際の持株会社に「ABホールディングス株式会社」という形式で名付けるケース[2]も多く、大半の持株会社が「○○ホールディングス」と名付けられている。

「ホールディングス」(英:Holdings)は、アルファベット表記を用いる場合、日本では通例的に"HD"と略される場合が多い(例:角川GHD、現KADOKAWA)。「ホールディングス」が付いている会社が純粋持株会社とは限らない。

逆に、持株会社の社名を「○○△△ホールディングス」とする義務もないため、注意を要する(例:両備ホールディングスツネイシホールディングスケーズホールディングス。いずれも事業持株会社。吉本興業コクヨも持株会社であるが、「ホールディングス」とは付いていない)。

持株会社では社員採用を行わず、「事業会社分割時の残留」「株式移転設立時の転籍」「傘下子会社からの出向・転籍」などにより、「持株会社の社員」となるケースがほとんどである(中間持株会社では親会社と子会社の双方から出向か転籍)。また、持株会社と傘下会社の双方を兼職している場合もある。持株会社が採用活動を行うことがあっても、あくまで傘下子会社の採用窓口としての機能のみである。なお、極稀に持株会社の社員として採用後、各グループ会社へ出向する例もある。[3]

歴史[編集]

日本では、戦前の財閥本社が純粋持株会社の形態を採っていた。しかし、戦後に制定された独禁法によって、持株会社たる会社の設立及び既存の会社の持株会社化が禁止された。その後、金融ビッグバンの一環で1997年に同法改正によって純粋持株会社が解禁された。解禁後の第1号は、同年に株式会社神戸セントラル開発が商号を変更し純粋持株会社となった株式会社ダイエーホールディングコーポレーションである(その後、同社はダイエーグループの経営悪化による合理化で2001年に解散)。

上場会社においては、1999年に大和證券株式会社が商号を変更し純粋持株会社となった株式会社大和証券グループ本社が第1号である。

近年は、2社以上の経営統合において、共同で持株会社を設立して両社がその子会社となったのちに、合併などの再編を行う事例が多くなっている。[4]また、持株会社が子会社(株式移転方式では旧親会社が持株会社)を合併して事業会社に戻す事例も出ている。[5]

持株会社の創り方[編集]

持株会社を創る方法は、抜殻方式、株式移転方式、株式交換方式などがある。

抜殻方式[編集]

自ら行っている事業を子会社に移し(事業譲渡あるいは会社分割。会社分割の場合、既存法人に承継する吸収分割と、法人を新たに設立する新設分割とがある)、自身は持株会社に移行するものである。子会社を多く有し、事業会社でありながらグループ統括会社であった会社が、事業とグループ統括を切り離す際によく用いられる。日本電信電話株式会社[6]旭化成株式会社、セイコー株式会社、日本テレビ放送網株式会社、株式会社東京放送[7]、株式会社フジテレビジョンイオン株式会社[8]などが採用している。

など
  • 免許・登録が必要な事業(不動産事業、銀行業、証券業、航空事業など)は法人に対して免許を与えているため、抜殻方式による持株会社移行(分社化)には、承継法人が別途新たに免許を取得する必要がある。実例として、2005年4月1日に純粋持株会社に移行した阪急ホールディングス(旧:阪急電鉄株式会社、現:阪急阪神ホールディングス株式会社)は、あらかじめ承継予定会社(阪急電鉄分割準備株式会社:1989年に設立された休眠会社を活用)に各種許認可を取得させたうえで、会社分割(吸収分割)を行っている(同日、阪急電鉄分割準備株式会社は阪急電鉄株式会社に商号変更)。阪急電鉄のこの会社分割は、鉄道事業によるものではなく、阪急電鉄の不動産事業によるものである(鉄道事業については新設分割が可能。例:一畑電気鉄道一畑電車)。
  • 旅行会社については持株会社に移行した後も、旅行業登録をそのまま残すケースもある(ジェイティービーKNT-CTホールディングスがこれにあたる。いずれの場合もJR指定旅行会社は事業子会社ではなく持株会社が指定されている)。

株式移転方式[編集]

持株会社となる完全親会社を株式移転によって新規に設立するものである。複数の会社による株式移転は合併代替方式とも呼ばれる。主な例は、株式会社バンダイナムコホールディングスセガサミーホールディングス株式会社、株式会社テレビ東京ホールディングスなど。この場合、子会社株式は旧親会社が保有したままなので、必要に応じて旧親会社の会社分割か株式譲渡の手続きを取って子会社管理事業を承継することがある。

株式交換方式[編集]

既存の会社を株式交換によって完全親会社に仕立て上げるものである。これを採用して持株会社体制に移行したものは、株式会社みずほフィナンシャルグループ、株式会社メルコホールディングスキョーリン製薬ホールディングス株式会社など。

特殊ケース[編集]

他、きわめて特殊な例では、民事再生法の適用を申請した企業(再生企業)が100%減資したうえで既存の会社が新たに再生企業に全額出資したケースもあった。株式会社そごうおよび系列地域会社12社は100%減資を行い、休眠会社の株式会社十合(後のミレニアムリテイリング→そごう・西武)が新たにこれら13社にそれぞれ全額出資、再生13社は資本親子関係が切れ、十合を完全親会社とする兄弟会社となった。株式会社十合は、その経緯から「受け皿会社」と当時表現されたが、持株会社そのものである。

その他の特殊なケースとしては、国有化状態であった足利銀行の受け皿として、野村グループなどが出資して足利ホールディングスを設立し、国が保有する足利銀行の全株を足利ホールディングスが引き受ける形で、足利ホールディングスが足利銀行の持株会社化したというケースもある。あるいは、ケーズホールディングスのように、地域事業会社を子会社化する過程の中で、事業会社のまま「ホールディングス」とついたケースもある(直接的には、ギガスケーズデンキという商号だった当時、デンコードーを子会社化したことから改称したことによる)。

持株会社のメリット・デメリット[編集]

メリット[編集]

  • 各部門毎の子会社化からもたらされるメリット。
    • ある特定の部門の利益にとらわれない、戦略的な本社(親会社としての持株会社)の構築。
    • 新規事業の立ち上げがしやすい。
  • 経営統合で合意済みの他企業に対する買収、グループ化(M&A)がし易い(友好的買収)。
  • 親会社への直接的敵対的買収を通じて、傘下会社の間接的敵対的買収がされる事態が実質不可能となる(親会社である持ち株会社の株は非公開株としている事が一般的である為)。
  • 傘下の各社への権限の委譲がしやすい。
  • 柔軟な人事制度の導入がしやすい。
  • さらに、子会社からの受取配当金に関して、連結納税制度適用による節税メリットが挙げられる。個別申告の場合、受取配当金の益金不算入額(この額が大きいほど納税額は小さくなる)は、負債利子控除後の残額である。これに対して連結納税を適用すると、100%子会社からの受取配当金は負債利子が控除不要であり、全額益金不算入扱いとなる。持株会社は、傘下の子会社からの受取配当金を事業の中核としているため、連結納税制度適用による節税メリットは計り知れず(企業によっては数十億円規模の効果となる)、受取配当金に関する節税メリットを最大限活用する目的で連結納税制度を検討・加入する持株会社も増加している。
  • 持ち株会社Aの下に事業会社xyzがぶらさがっており、z社で巨額損失が発生したような場合、z社とA社は打撃を受けるが、x社とy社はダメージを受けない。仮に事業部制の場合は、財務が遮断されていないため、無関係のx事業部y事業部にも累が及んでしまう。この事態の最後の選択として、A社はx社y社を売却することにより、その売却代金で、A社自身を救うことができる。カネボウがカネボウ化粧品を売却したのはこの例である。

デメリット[編集]

  • 子会社から見た場合、親会社(持株会社)への「お伺い」が増えてしまう。
  • 各子会社(事業会社)間の横の連携がしにくい。
  • 労働条件の交渉について、使用者側の窓口(実際の雇用関係のある子会社なのか、子会社に対して実質的な経営権を有する持株会社(親会社)なのか)が不明となる。
  • 特に純粋持株会社(親会社の主たる収入が子会社からの配当である形態)の場合、持株親会社単体では子会社(あるいは連結ベースでのグループ総体)より信用リスクが大となるため、格付上の「ねじれ」が生じるケースがある。
  • 2010年8月現在において、日本国内の各証券取引所の内規により非上場企業の子会社は上場を認められていない、すなわち非上場の持株会社の子会社を上場する事が実務上不可能[9]であるため、各事業会社が資本市場からの直接金融による資金調達が不可能である。
  • 持株会社およびその子会社に赤字企業がある場合、グループ全体に信用不安が連鎖し、個別企業と見た実力よりも資本市場において株価を通じて過小評価される、いわゆる「コングロマリット・ディスカウント」という状態に陥る。
  • 財閥解体を経て構築された経済システムの有名無実化に繋がる(持株会社による傘下企業全体の財閥化は事実上、法の抜け道となる)。

持株会社の一覧[編集]

純粋持株会社のみを挙げた。

複数業種[編集]

  • 日本郵政(通信・運輸・銀行・保険の複合型持株会社)

銀行・保険・証券・商品その他金融系[編集]

金融持株会社 も参照

食品系[編集]

化学系[編集]

石油系[編集]

重工業系[編集]

新聞・出版・広告系[編集]

情報・通信・放送系[編集]

小売・外食系[編集]

エンタテインメント系[編集]

運輸・交通・旅行系[編集]

建設・不動産系[編集]

その他[編集]

かつて存在した持株会社[編集]

事業持株会社化したもの・事業会社化したもの・事業会社に吸収合併されたもの[編集]

事業会社以外との合併により消滅したもの[編集]

経営破綻したもの[編集]

その他の理由によるもの[編集]

脚注[編集]

  1. 伊藤靖史他『会社法』有斐閣、2009年、368頁
  2. マルハニチロホールディングス、セガサミーホールディングスなど。
  3. 伊豆急ホールディングスで実施。「東急グループ企業 採用ページ」より
  4. 明治ホールディングスJXホールディングスなど
  5. エディオンKADOKAWAマルハニチロなど
  6. 事業は東日本電信電話西日本電信電話NTTコミュニケーションズNTTドコモなどへ移管。
  7. テレビ事業はTBSテレビへ、ラジオ事業はTBSラジオ&コミュニケーションズへ移管。
  8. イオンリテール光洋マックスバリュ長野等の地域法人・イオントップバリュなどの専門企業・コックス等の専門店担当会社へ移管。
  9. サントリーホールディングス子会社のダイナックサントリー食品インターナショナルのような例外はある。
  10. 日本ビクターケンウッド、J&Kカーエレクトロニクス。

関連項目[編集]