就職難

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就職難(しゅうしょくなん)は、就業希望者が正社員就職することが難しい状況を言う。

要因[編集]

就職が困難となる状況は、景気などのマクロ経済的要因と、おおむね求職者と採用企業とのニーズのずれによって発生する要因に分かれている。採用企業のニーズには、年齢地域、専門的技能(スキル)、ソーシャルスキルヒューマンスキル給与学歴などさまざまな視点があり、これらが複合的に関連している。

企業は「年齢に相応する知識経験」を重視することが高年齢者の就職を困難にする原因になる。例えば知識や経験に劣る30歳の者が、給与などの待遇が22歳(4年制大学の新卒年齢)並みかそれ以下でもよいから企業に就職したいと考えても、企業は「30歳の社会人としての知識や経験」を求める傾向にあるため、採用に至らないことが非常に多い。これは平成18年版国民生活白書「多様な可能性に挑める社会に向けて」でも指摘されている。企業側も、30歳で採用した者には30歳並みの給与を与えるのが当然であると考えており、知識や経験が浅いからといって給与を極端に減額してまで採用するという習慣はないため、結果としてそのような人物は最初から採用しないということになる。

前述のような意識の現れの最たるものが、求人で当たり前のように見られる新卒採用と中途採用の区別という慣例である。年齢または学歴によって募集対象を限定することで、初めから22歳の者と30歳の者を同じ舞台に並ばせないようにしているのである。

また、社員の採用に関しては障害者の雇用以外では採用を強制する法制度も無く、完全に企業側の自由な裁量が認められており、採用に至る過程もすべて秘匿されており全く不透明である。(ただし、ハローワークからの紹介で面接、採用試験を受けた場合はハローワークに採否結果と不採用の理由を知識経験が不足している、業務内容に合わない、賃金が折り合わないなどの選択肢から選んで紹介状に付随している報告書に記入し報告することになっている。)就職に関する差別を禁止する法整備に関しても、性差別については男女雇用機会均等法があるものの有効に機能しなかったために複数回の法改正を強いられており、年齢差別学歴差別などについては全く企業の野放し(募集要項に『大学名や学歴、学部にこだわる事なく、人物本位での選考』等と謳っていても、実際は偏差値下位の大学や専門学校からの応募は一切選考の対象にならない等)状態になっているのが現状である。

就職難となる原因の例[編集]

卒業後の年数[編集]

新卒時[編集]

  • 採用企業のニーズ - 企業は、柔軟性や人間性、学歴のほか、他の企業文化に染まっていないという事実を重要視することが多い。
  • ミスマッチの概要 - 新卒一括採用の慣習が広く存在する日本では、景気の動向などにより、卒業年次によって就職の容易さに極端に差が出る。求職者の中には、自分の希望する業界へ就職できなかった場合、就職浪人となって就職活動を継続する者もいる。

卒業1〜2年[編集]

  • 採用企業のニーズ - いわゆる第二新卒であるが、企業は、柔軟性や人間性のほか、社会人としての基本的な事柄の習得を前提としている。
  • ミスマッチの概要 - 求職者がまったく働いていないかフリーターの経験のみで、正社員として雇用された期間がない場合、企業側が求める「社会人としての基本的な事柄の習得」を満たしていないと取られることがあり、就職が困難となる。また、求職者側には、「まだ大丈夫だろう」といった気持ちに代表される錯誤が広くあり、それほど真剣な就職活動を行っていない場合や、就業先の選択を狭くしている場合もあり、就職が困難となる。

卒業3〜5年[編集]

  • 採用企業のニーズ - 若年層の中途採用として、企業は、柔軟性や人間性のほか、社会人としての基本的な事柄の習得、やる気を前提とし、その上で前職での若干の成果を求めることがある。
  • ミスマッチの概要 - 求職者がまったく働いていないかフリーターの経験のみで、正社員として雇用された期間がない場合、企業側が求める、「社会人としての基本的な事柄の習得」とともに、「年齢に相応する基本的な業務知識・経験」を満たしていないと取られることがあり、たとえ真剣に求職活動を行ったとしても中堅以上の企業への就職が非常に困難となる。求職者が直前まで正社員として勤務していた実績がある場合は、上記の要素を満たしているため、ある程度の幅で転職活動を行うことが出来る。

卒業5〜10年[編集]

  • 採用企業のニーズ - 30歳前後の中途採用として、企業は、柔軟性や人間性、社会人として当然の常識のほか、前職での若干の成果とある程度の専門的知識の習得を前提としている。
  • ミスマッチの概要 - 求職者が全く働いていないかフリーターの経験のみで、正社員として雇用された期間がない場合、企業側が求める、「専門的な知識」を満たしていないととられることがあり、たとえ真剣に求職活動を行ったとしても就職が極めて困難な状況となることが多い。求職者が直前まで正社員として勤務していた実績がある場合は、その専門性の方向での転職が容易となるが、専門性が生かされない他の分野への転職はやや難しくなる。

卒業10年以上[編集]

  • 採用企業のニーズ - 長期の職業経験を積んだ中堅従業員の中途採用として、企業は、前職でのはっきりとした成果と専門的知識の習得を前提とし、その上でその職種に応じたマネージメント能力を求めることがある。
  • ミスマッチの概要 - 求職者が全く働いていないかフリーターの経験のみで、正社員として雇用された期間がない場合、企業側が求める、「すべての基準」を満たしていないととられることがあり、農業・福祉など一部分野を除けば、たとえ真剣に求職活動を行ったとしても就職がほぼ不可能な状況となる。求職者が直前まで正社員として勤務していた実績がある場合は、その専門性の方向での転職が容易となるが、相応の実績と、マネージメント能力のPRが必要となる。

転職回数[編集]

概ね社会人経験の年数を3で割ったよりも転職回数が多い場合や、30代後半以降で、数度にわたる転職がある場合などは、定着率について採用企業に不安が発生する。また、社会人経験が10年以上で、一度も転職経験がない場合は、従来とは異なる企業風土への適応について不安が発生する。このため、長期的に雇用することが前提となる正社員での登用について、懸念される傾向にある。ただし、IT、医療、外食、出版などの業界では転職を繰り返す事はごく一般的であり、極度に多い場合を除いて、転職回数にはあまりこだわらないことも多い。

直前の在籍期間[編集]

正社員として勤務したにもかかわらず、1年未満での転職の場合は、定着率について採用企業に不安が発生することが多い。特に紹介会社などによる紹介によって採用された企業を1年未満で退職している場合は、非常に敬遠する傾向がある。

スキル[編集]

求職者が持つスキル(専門的技能)や、マネージメント能力が、採用企業の求める基準に満たしていない場合は、就職が困難となる。特に、業界が求める求職者の年齢に対する平均的な専門能力を下回っている場合は、その傾向は強い。業種や時期などによっても異なるが、一般論で言えば30歳以降での職種の未経験者は意欲があっても就職が難しくなり、35歳以降になると、たとえ真剣に求職活動を行ったとしても就職が困難となる。

地域[編集]

近年、地域による経済格差の拡大が発生している。このため、経済活動の過程の一つとして行われる採用活動が、低迷した地域では不活性になる傾向があり、地域経済の浮沈とその地域に居住する求職者の求人倍率と連動することが多い。

学歴[編集]

就職氷河期[編集]

1992年から2004年にかけて、新卒に対する雇用環境が著しく悪化した。その主たる原因は、バブル崩壊による景気後退の影響で企業が軒並み人件費抑制のために新卒採用枠を縮小したことにある。この影響で就職の機会に恵まれず、ニートやフリーターになることを余儀なくされた者が急増した。2005年以降は新卒の雇用環境は回復したが、就職氷河期の影響で就職できなかった者は雇用の対象にはならず、また長年正規雇用されなかった者は企業が採用しようとしないため、依然として厳しい就労環境に晒されている。現在でも2008年度卒以降の新卒者に対して、同様の懸念が生まれている。

女性の就職難[編集]

総合職、一般職という区分があった頃(例えば1992年)、「女子学生は採用しない」「(男子学生には送られる資料が)女子学生には送られない」といった事例があった。こういった事例の背景として、当時の企業側が女性を本格的な労働力としては考えていなかったことが指摘されている。その後男女雇用機会均等法の改正もあり、少なくとも表面上の差別は減少傾向にある。

かつて日本では女性の失業率が高かったが、1998年以降男女の失業率は逆転し、それ以降は男性の方が失業率が高くなっている。ただし、女性は男性に比べて非正規雇用の比率が高く平均賃金が低いため、同一条件で比較して女性の方が有利とは限らない。

就職難の影響[編集]

定職につくことが出来ない状況では、経済基盤が確立しにくく、将来や人生設計が描きにくい。そのため、消費を抑制し貯蓄に回そうとするため、消費が低迷しそれにより更に経済が悪化するという悪循環に陥る。また、家族を養えず出費が見込まれる結婚・出産を忌避するようになり、婚姻率も低下する。

また住居の維持が困難なほど生活基盤が崩壊している者がネットカフェ難民路上生活になり、社会問題となっている。

関連項目[編集]