理科離れ

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理科離れ(りかばなれ)とは、理科に対する子供の興味・関心・学力の低下、国民全体の科学技術知識の低下、若者の進路選択時の理工系離れと理工系学生の学力低下、そしてその結果、次世代の研究者・技術者が育たないこと、などの問題の総称である。研究者・技術者が育たなくなった結果、ものづくりイノベーションの基盤が危うくなるといった問題が指摘されている。

日本においては、一般市民の科学リテラシーが先進諸国と比較しても極めて低いことが指摘されている。

また、高校の文理選択時や大学進学時などをふまえ、理系離れ工学部離れといった言葉も使われる。

原因[編集]

理科離れは、日本以外の先進国でも共通して見られる現象である。科学技術が発達した時代に生まれ育った現代の若者は、科学技術の成果に基づいて生産されたものを喜んで利用(消費)するが、科学技術への興味・関心はなく、科学技術の成果の生産者になろうとしない。これが理科離れを生むメカニズムであるとされる。

現状[編集]

現状では、理科離れの明確な定義は存在しない。それを指摘する根拠の一つとして、国際教育到達度評価学会が実施した「国際数学・理科教育調査」により、日本の生徒は成績が良いにもかかわらず、理科が楽しいと思う生徒が極めて少ないことが挙げられる。「日・米・英における国民の科学技術に関する意識の比較分析」においても、日本国民の科学技術に対する関心は他の2カ国と比較して低い。

日本を含む先進国で「理科離れ」が浮き彫りになったのは、OECD(世界協力開発機構)の国際的な学習到達度調査が始まった2000年ごろ。子どもの理系教科における学力や意識の国際比較が可能になったためである。現在、理科離れの傾向に危機感を抱いた各国は、科学技術政策における重点課題に理数系教育の充実を挙げ、科学技術分野の人材育成・確保に力を入れている。

「平成22年度の小学校理科教育実態調査」によると、教職経験5年未満の教員で、理科の指導が「得意」「やや得意」と肯定的に回答しているのは49%にとどまっている。

改善策とそれに対する反論[編集]

文系入試も理数必須、自民提言。技術立国に不可欠(2013年)[編集]

自民党の教育再生実行本部(遠藤利明本部長)が理数教育の充実策として、文系を含むすべての大学入試で理数科目を必須とすることや、小学校の理科の授業をすべて理科専門の教師が行うことを提言する。

日本経済を復活させ、技術立国として「イノベーション(技術革新)」を進めていくには、将来世代に対する理数教育の充実が不可欠と判断した。安倍晋三首相に提出する第1次報告案に盛り込み、夏の参院選公約の目玉の一つにする方針だ。

文系の大学入試では、特に私立大の試験科目は英語・国語・社会の3科目が中心となっている。同本部は、文系の入試に理数科目が加われば中学、高校での理数科目の時間が増え、科学技術系分野に関心を持つ生徒が増えるとの期待をしている。

同時に、高校で理数科目に重点を置く文部科学省指定の「スーパー・サイエンス・ハイスクール」(SSH)の生徒を倍増する。特に優れた生徒を対象とした「超SSH制度」の導入も図る。

小学校では、理科の授業について、中学・高校の理科の教員免許を持つ教諭に限定する。

平成25年度の大学入試では、経済不況の影響からか学費の安い国公立大の理系に人気が集まる傾向があった。ただ、同本部は若者の「理科離れ」の傾向が止まったわけではないとみている。小学校教諭には文系学部出身者が多く、児童に対して理科の魅力をうまく伝えられていないのではないかと分析。観察や実験の知識や技術を持つ専科教師が指導することで、児童の理科に対する興味が伸びると期待している。

同本部は、第1次報告案で、大学入試・卒業時に英語運用能力テスト「TOEFL(トーフル)」を活用する英語教育の抜本改革や、27年をめどに全小中高生に情報端末(タブレットPC)を配ることを盛り込むことにしている。これらに理数教育の充実を合わせ「教育再生の3本の矢」として、今後1兆円規模の集中投資を図る。

改善策[編集]

2007年6月、日本学術会議は、小学校高学年から理科専科教員の導入や、博士課程修了者の積極的な教員への採用、小学校教員養成大学の入試で、理科系科目を必須化することなどを提言した。同年12月、教育再生会議も、3次報告で小学校高学年での理科専門教員の配置を盛り込んだ。

文部科学省は、2013年度予算で理科教育振興策を講じた。特に「理科実験準備等支援事業」は、小・中学校などでの理科の観察・実験に使用する設備の準備・調整を行う助手を配置する、というもので、専科教員の不足を補う施策として注目される。

自由民主党の教育再生本部は、文系大学入試で理数科目を必修とすることや、文部科学省指定の「スーパーサイエンスハイスクール」の生徒を倍増すること、小学校の理科の授業を中学校や高等学校理科の教員免許を持つ教員に限定することを提案している。

科学技術振興機構は、理数系教員(コア・サイエンス・ティーチャー)養成拠点構築プログラムによって、「理工学系学生」「現職教員」「教育学系学生」を地域の理数系教育の中核を担う教員となるよう養成している。

反論[編集]

大槻義彦は自著で「科学館やイベントで一時的に科学に対する関心や面白さを喚起しても、持続できずに結果として関心が失せてしまう」と理科イベントや科学館などによる取り組みを否定している。

関連文献[編集]

関連項目[編集]