鋼の錬金術師に登場するホムンクルス

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鋼の錬金術師に登場するホムンクルス(はがねのれんきんじゅつしにとうじょうする-)は、漫画作品及びテレビアニメ鋼の錬金術師』に登場した人物のうち、ホムンクルス及びそれに属した者に関する一覧である。また作中でのホムンクルスの設定の説明も記述する。


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創造主 ≪クリエイター≫[編集]

「父」[編集]

人造人間達からの呼び名は統一されておらず(「父上」、「お父様」、「親父殿」、「おとーさま」等)、本名と呼べるものも存在しない。ここではあくまでWikipedia内での仮称として「父」と呼称する。
人造人間達の創造主、つまり父親といえる存在。ヴァン・ホーエンハイムと同じ容姿を持つ。セントラルの地下深くに居城を構えており、普段は大量のパイプが伸びた椅子に自らの肉体を接続し、錬金術の研究にふけっている。
彼はクセルクセスがまだ存在していた頃、ある錬金術師が自らの所有する奴隷・二十三号(現在のホーエンハイム)から作り出した、フラスコの中の小人《ホムンクルス》と呼ばれる存在。生まれながらにしてあらゆる知識を身に付けていたものの、最初はフラスコの中でしか生きられない存在であった。そんな中偶然二十三号と邂逅。彼に「ヴァン・ホーエンハイム」という名前と錬金術の知識を与えた。その後、クセルクセス王が不老不死を求めたために、不死になる方法として賢者の石を作る知識を与えた。そして、クセルクセス全国民を代価として賢者の石の錬成が行われた時、実質的な錬成陣の中心にいたホーエンハイムの肉体に、クセルクセスの全ての民のうちの半分の命から作り出された強大な賢者の石と知識を与え、自らはホーエンハイムの血からホーエンハイムのコピー体を作り出し、残り半分のクセルクセスの国民の命から成る強大な賢者の石を付加させたその体を依代として、自由に活動できるようになった。
強大な賢者の石を蓄えたその肉体は、傷の男の人体破壊でさえ傷一つ付かず、また賢者の石自体が構築式を内蔵している為、モーションなしで術を発動させることができる。さらに額にある第三の目から石を精製する、擬似・真理の門を作り出す、あるいはアメストリス国の錬金術師達の錬金術の発動を不可能にするなど、その能力は強力であり、いまだ未知数。自らの魂から精製した賢者の石を使って人造人間を造り、それぞれに自らの魂を基にした七つの大罪に冠する名をつけている。
はるか昔から、人造人間らを率いて何らかの大きな計画を遂行しており、そのためにアメストリスそのものを建国させた。そして国を円状に拡大させるとともに、スロウスに掘らせた地下トンネルと、流血を伴う大事件によって各地域に刻んだ「血の紋」によって、巨大な賢者の石の錬成陣を製作しようとしているが、その計画の全貌はいまだ不明。また彼の計画には「真理の扉」を開けた経験のある錬金術師・いわば『人柱』が五人必要であるらしく、国家錬金術師制度を利用して錬金術師を選別、確認した人柱の確保と保護を行っている。現段階において「父」は人柱の人選として、エド、アル、ホーエンハイム、イズミ(可能性があると言う段階)の4人までを挙げている。
人間の事は虫ケラ程度の存在としか見ていないが、自身の計画に必要な人間にはそれなりの敬意・態度をとる。またアメストリス建国主でもあるため昔からアメストリス要人と関係が深く、現在は最高権力者が他ならぬ人造人間で、中央の上層部の軍人が全員人造人間に(ひいては「父」に)魂を売っている状態となっている。

ダンテ[編集]

イズミの師匠時の声:杉山佳寿子/ライラ同化時の声:かかずゆみ
アニメにのみ登場。原作の「父」に近い役割を持ついわば「」と言うべき人物で、イズミの元師匠。当初は、深い森の奥に屋敷を構えてひっそりと暮らす穏やかな老婦人だったが、その実体は賢者の石の力で他人の肉体を乗っ取り、悠久の時を生きてきた女錬金術師である。錬成陣なしの錬成や、赤ん坊を使って真理の門を開くなど、錬金術師としての実力は高い。物語の進行と共にその本性を表し、弟子のライラの身体を生きたまま乗っ取るなど、その冷徹・利己的な業の深さが現れてくる。大の人間嫌いで、それによりイズミと袂を分かつ。
肉体の入れ替えに必要な賢者の石を常に確保するため、石の秘密を一般に知られないように守ると同時に、多少の賢者の石の情報を流す、あるいは争いを起こすことで、賢者の石を求めさせ追い求める者に賢者の石を作らせ、それを横取りするという計画を立てていた。そのためにホムンクルス達を使い、各地で工作活動を行っていた。ホムンクルス達は「賢者の石で完全な人間にする」との口実で利用していたに過ぎず、賢者の石を勝手に使おうとしたラースからは手足を奪うなど、まったく信用していなかった。実際に部下として信頼していたのはエンヴィーとブラッドレイ(プライド)ぐらいである。
「永遠の命」を得ることを目的としており、ライラの肉体を奪ったのもそのため。賢者の石を用いた方法では、入れ替わった相手の肉体とダンテ自身の魂との拒絶反応に加え、肉体の移動による自身の魂の劣化により、生きたまま身体が腐敗していくうえ、その周期が早まっているなどの欠点もあり、賢者の石のみならず真理の門の研究なども行っていた。終盤では、地下都市にてホーエンハイムを真理の向こうの世界に飛ばす、アルを人質に取ってエドを迎え撃つなどしたが、最期は自ら理性を奪ったグラトニーに襲われるという、自業自得の結末を迎えたとされている。
かなり歪んだ異常とも言える恋愛観を持っており、かつての同僚だったホーエンハイムを400年以上も恋い慕い、ホーエンハイムがいなくなるとその息子であるエドにも興味を示し、ロゼの肉体を得た暁には彼と恋仲になろうとするなど、愛欲にはかなり貪欲であった。そして、肉体のストックと定めていたロゼに対しても同様の感情を抱いていた節もある。
名前は叙事詩「神曲」の作者である詩人・ダンテ・アリギエーリから要出典

人造人間≪ホムンクルス≫[編集]

概要[編集]

色欲(ラスト)、暴食(グラトニー)、嫉妬(エンヴィー)、強欲(グリード)、怠惰(スロウス)、傲慢(プライド)、憤怒(ラース)と言う各人が七つの大罪から付けられた名と、肉体の一部にウロボロス(尾を噛む蛇の印。始まりと終わりを示す)の印を持つところ、そして黒ずくめの服に背中から基盤のような模様が伸びているのが共通。しかし原作とアニメでは、その生まれ方、行動原理ともに異なるため、それぞれ分けて説明する。

原作
「父」から生み出される賢者の石を核とする。その際、石はそれぞれに七つの大罪を冠した「父」の魂という面を持ち、生み出されたホムンクルスは、その与えられた名(業)に関係する性格、行動原理を持つ。また賢者の石内の魂の数だけ命がある。
生まれてから既に完成した人格、豊富な知識を備え、創造主への愛情として基本的に「父」のために行動する。ただし、グリードのように、与えられた業に忠実であるがために離反するものもいる。
ホムンクルスの製造方法は、グラトニーのように「父」の体から直接生み出されることもあれば、ラースや二代目グリードのように、生身の人間に賢者の石を注入することで生み出す場合もある。こういった人間ベースのホムンクルスは、優れた身体能力や各々の特殊能力は問題なく有しているが、人間同様に成長・老化していき、特にラースに関しては老化による身体能力の衰えがみられる。またホムンクルスの特徴の一つである基盤模様はなく、魂(命)も一つしか残らないため、一度死ぬと蘇生する事はできない。直接生み出されたホムンクルスの場合、黒尽くめの服も体の一部である。(例・ラストがマスタングに燃やされた際は、服も一緒に再生している。)
アニメ
人体錬成の失敗によって生み出された、人の形を成していない「出来損ない」に、賢者の石の未完成品「紅い石(アニメのみの名称)」を食べさせることにより、人間と同じ形を持たせた者達一般のこと。ゆえに、それぞれのホムンクルス達には、それぞれベースとなった人間とその死体(遺品)が存在し、それが弱点となる(ただしラースの場合はイズミが錬成した子供を門の向こう側へ送ってしまったため、遺品は存在しない)。しかし、必ずしも生前の人間と完全な同一人物という訳ではなく、ラストやスロウスは人格が異なっている。それゆえに自分達の中に残った、ベースとなった人物の生前の記憶に苦しみ続けた。なお、アニメでは黒尽くめの服はそれぞれ色合いが微妙に異なっており、こちらでは普通の服とあまり変わらないものとなっている。(例、ラースやスロウスは誕生時には全裸であった。)
七つの大罪に基づく名は、ダンテが適当に割り振っただけという面が強い。そのため、名はホムンクルス達の行動には基本的に関係がなく「完全な人間になりたい」という欲求のために行動する。そのため原作に見られる「ホムンクルスとしてのプライド」もほとんど無い。そして、その感情をダンテが利用し、自身の「賢者の石を手に入れる」という目的の駒としてホムンクルス達を使役している。
すべてダンテが製造したというわけではなく、他人が作ったホムンクルスに「紅い石」を与えることで仲間に引き込んでいる場合も多い(「エンヴィー」「ラスト」「スロウス」「ラース」)。

ラスト[編集]

色欲」の名を持つ人造人間。ウェーブがかった髪をした妖艶な美女の外見を持ち、胸元にウロボロスの紋章を持つ。腕を組む癖がある。指先を伸縮自在の鋭利な刃に変えることができ、自在に操りすべてを貫くその強度から「最強の矛」と呼ばれるほどの凶器となる。
身体能力は人間を凌駕するも、戦闘能力自体はホムンクルスの中では低い(命のストックがあるとはいえ、マルコーやヒューズ、マスタングにあっさり殺されてしまう事もあった)。年長である事を多少気にしてるのか、エンヴィーに冗談半分(ちょっかい)で「おばはん」呼ばわりされる事をやや根に持っていた様子(おまけ4コマでは、自分の悪口を言ったグリードとエンヴィーを半殺しにして、制裁としてグラトニーに喰わせようとまでしている)。ちなみにアニメでは彼女のほうが年少であるにも関わらず、ラースにおばはん呼ばわりされていた。
原作では2番目に作り出された。「父」の片腕として計画遂行の行動隊長的役割を担っており、エルリック兄弟を尾行したり、「ソラリス」の偽名を使ってハボックと接触しマスタング一派を探ろうとする等、舞台の表と裏とで暗躍した。そして正体を現し、第三研究所でマスタングと対決。一度は勝利したかに見えたが、彼の凄まじい執念の前に敗北。謎の言葉を残し消滅していった。彼女の死と共に、核である賢者の石がエネルギーを使い果たし消滅したため、2代目が生まれる確率は極めて低いと思われる。
仲間内(特にグラトニーとラース)からは愛されてたのか、おまけ4コマで2代目のグリードが紹介された際ラース(ブラッドレイ)達からはラストの2代目(希望はスタイルそのままでドジっ娘)でない事を残念がられていた。ちなみに、原作者のお気に入りのキャラのひとりであり、ガンガン本誌などで「(退場させるのが)少し早すぎた」と述べている。
アニメでの設定
声:佐藤ゆうこ
ベースは傷の男の兄の恋人。彼が恋人を蘇らせようと行った人体錬成から生まれた。失った人間を蘇らせようとする者、戦乱に喘ぐ故郷を石の力で救おうとする者など、さまざまな人間達に賢者の石を追わせ、実際に石を錬成できるレベルの者を探していた(それらの戦争や悲劇も、石を作らせるべくダンテによって故意に引き起こされたもの)。
性格は基本的には冷酷だが、ホムンクルスの中では一番人間臭い一面を見せ、賢者の石の力で完全な人間になりたいと強く願っている。立場と境遇が似ているせいか、スロウスに対して友情にも似た親近感を持っていた。原作のような隊長的な存在ではなく、単なる使いっ走りと言う印象が強い。ゲーム版「ドリームカーニバル」ではグルメという意外な一面を見せている。
終盤にて生前の記憶の一部を取り戻し、創造主であるダンテの奴隷同然の扱いに我慢できなくなり、ダンテと決別してエルリック兄弟の側に寝返る。同時にスロウスとも人間になりたい理由の相違(スロウスは今の自分のまま人間になりたかったが、ラストは昔の自分を取り戻したかった)から袂を分かち、彼女の封印に手を貸した。それに激怒したラースも封印しようとしたが、封印の錬成陣に引っかかってしまい、ラースの錬金術により賢者の石を吐き出され、封印されてしまった。今際の際の彼女は、自らが欲していたのは「人間としての死」だったことを自覚し、やっと呪縛から解放されたかのような穏やかで安らかな表情を浮かべていた。最後まで悪の幹部を想起させるキャラとして最後を迎えた原作とは違い、ダンテに利用されていたに過ぎない、ホムンクルスの悲劇性を象徴した哀れな女性であったと言える。彼女もまた、たったの7年と言うスロウスに次いで短い生涯だった。
この「ラスト」以前にも、別の「先代のラスト」が存在していた(詳細は不明)。ちなみに、一部のセリフや状況に原作のグリードのものが流用されている。

グラトニー[編集]

暴食」の名を持つ人造人間。舌にウロボロスの紋章を持つ。
体型は坊主で丸顔に丸い巨体という肥満体(容姿のモデルは「スノーマン」)。能力は材質、質量問わずどんな物質でも食べてしまうことであり、その能力とホムンクルスの不死性、そして巨体を生かした猪突猛進な攻撃を行う。原作・アニメ共に、その誕生はそれぞれの創造主の確固たる目的を持って作られているという点で、他のホムンクルス達とは一線を画す。先の意志の欠如もこの辺りが関係していると推測される。
性格はのんびり屋かつマイペースであり、無邪気な子供そのもの。自分の食欲に忠実で「食べていい?」が口癖。この際に中断・禁止されても、大抵守らず食べてしまう。それ以外に関しては、攻撃などをする際に仲間の許可を待つといった受動的な面が目立ち、「自分の意志」という面で欠如が見られる。特にラストを慕っており、原作・アニメ共にラストが倒された後はかなり落ち込んでいる。原作ではラストを殺した張本人であるマスタングの名前を聞いた途端に暴走した(後述)。
原作では6番目に作り出された人造人間。「父」が真理の扉を作ろうとした結果、失敗して誕生した「擬似・真理の扉」である。グラトニーが自分の容積以上の物を食べることができる理由がまさにこれであり、食べられたモノはすべてこの空間へと送られる。感情が高ぶると口調が一変し、腹が割れて口と繋がり肋骨を牙と見立てたような縦向きの大きな口が現れる。その中心には目があり、真理の扉が開いた時に似ている。この口によって棒放射状に対象を飲み込んでしまうということが可能(ただし、リンと戦った時にエンヴィーが「飲んでいいよ」という許可を出そうとしていたことから、感情が高ぶることが飲み込みを行うための条件というわけではない)。攻撃スタイルが災いし死にすぎた結果、石の再生力を使い果たして回復不能に陥り、現在「父」に賢者の石を取り出されて一時的に死亡した状態になっている。
アニメでの設定
声:高戸靖広
ベースは不明。ダンテによって賢者の石や赤い石の結晶化のために作り出された。ラストと共に行動することが多く、彼女の死を知った後は悲嘆に暮れ、賢者の石となったアルを純粋な賢者の石へと結晶化するために飲み込ませようとするダンテの思惑通りに行動しないことから、ダンテによって理性を消し去られ、単なる食欲だけの存在となって暴走する。最終回で暴走した状態でダンテと共にエレベーターの中へと消えた(ダンテを喰い殺したような演出となっているが、それによって「ダンテが死んだ」とは明示されていない)。
その後は劇場版にも登場。異形の姿となっており、アルとラースに襲い掛かるが、ラースと共に門の材料にされる。

エンヴィー[編集]

嫉妬」の名を持つ人造人間。左脚の太腿にウロボロスの紋章を持つ。エルリック兄弟の敵ではあるが、人気投票ではホムンクルスの中では唯一10位以内に入っていたりと、かなり人気は高い。原作では、4番目に作り出された人造人間。
普段から見れば明るくひょうきんな性格だが、本性は陰険かつ残忍な皮肉屋。また、一旦キレると手がつけられないほどの残虐さを見せる。鬼畜な思考を持つ策略家で、『極悪非道』を絵に描いたような存在を関連し、ラストは「仲間内で一番えげつない」と評する。だが、彼以上に狡猾なプライドが登場して以降は、いささか三下的な役割になってしまった。自らの変身能力を活かして彼らの目的に必要な大量殺戮を引き起こすために重要な役割を担う、悪役らしいキーパーソンの存在として活躍している。また、私情と計画を割り切って行動したり、あくまでも利害の一致で協力したりと、ただの殺人狂ではない小賢しい面も見せる。人間を「下等生物」「虫ケラ」として見下しており、気に入っている人物以外の命を軽んじている。なお、人間に対して『極悪非道』である事は原作とアニメで共通しているが、殺戮を起こす理由は異なる(だが、人間に対しての私怨がある事も共通している模様)。
「父」に対しては忠実に従っているが、プライドに対して畏怖にも似た嫌悪感を見せていたり、ラースや2代目グリードといった人間ベースのホムンクルスをも見下すほど不信感を抱いていたりと、仲間内でもやや孤立気味で、妙に人間臭い面を併せ持つ印象がある。その反面、よく仕事を共にするラストとグラトニーに対しては仲間意識のような好意を持っている面も見せる。
自由自在に外見を変化させる能力で、色々な風貌をした人物や、或いは犬や馬といった動物に化けることができる。身体の一部を武器に変えたりと戦闘にも対応できるが、機械(アニメでエドに変身した際には機械鎧もコピーしていたが、見た目だけと思われる)や変身した対象の能力まではコピーできない。普段の容姿は長髪で中性的な顔立ちだが、それも変身した姿であり、本来の姿は人間の姿とは大きくかけ離れた怪物の姿である。その姿は四本腕・四本足の巨大黒ヤモリで、右目は黒い目に赤い瞳をしており、左目には小さな目が8つもある。人間よりも遥かに巨大であるため、当然ながら体重もかなりあるが、人間サイズに変身しても「質量が減る」訳ではないため、見た目に反して常人の数十~数百倍もの体重を持つ。エド&リンと交戦した際にはエンヴィーの着地した地点だけ鉄骨がひん曲がったり地面にめり込んだりしていた。他のホムンクルスとは違い、エネルギーとなるクセルクセス人の魂が賢者の石に凝縮されているだけではなく、エンヴィー自身の肉体で不完全な体を形成し身体中から生えている。本人にとってはこの姿がコンプレックスとなっており、「不細工」或いは「ゲテモノ」と呼ばれるとキレてしまう。[1]
マルコーら裏切り者の処分とウィンリィ拉致のため、ブリッグズに赴くが、それはマルコーらの策略だった。傷の男らによって追い詰められるが、巨大な化け物の姿をさらして舌でマルコーを縛り上げ、苦しめた。しかしそれでマルコーを自身に接近させてしまったことにより、彼の錬金術で賢者の石を破壊されて細胞の維持が効かなくなり、崩れ落ちて虫程度のほんの小さな身体になってしまった。
アニメでの設定
声:山口眞弓
ベースはホーエンハイムとダンテの息子。かつて水銀中毒により死亡したのをホーエンハイムが人体錬成した結果として誕生した。しかし、この後ホーエンハイムはダンテの前から去り、それを捨てられたと思い込んだことから、原作以上の極悪人となっている。戦闘能力も原作に比べて遥かに高い。本来の姿(生前の姿)はホーエンハイムにそっくりである。
実はプライド同様にリーダー格であり、ホムンクルス内の「影の首領」とも言うべき存在である。他のホムンクルス達と決定的に違うのは、生前の母親でもあるダンテの目的をすべて察しており、「人間になること」よりも「人間を苦しめること」に重きを置き、「人間がすべて滅んだ時にやっと忘れることができる。どうして僕が生まれたかと言う事を(要約)」と述べている。そのためラスト等の前では、仲間思いの面を演じていたが、内心では馬鹿にしていた。生前の記憶を完全に受け継いでおり、苦悩したラストやスロウスとは違い、逆に憎しみの糧とした。同じ父・ホーエンハイムから生まれた[2]エルリック兄弟を激しく恨み、終盤近くで人間(特にエルリック兄弟)への憎悪を向けた本性を表し、クライマックスでは一度エドを殺害。その後、アルがエドを人体錬成しようと試みた結果現れた門の向こうにホーエンハイムがいることを知り、ホーエンハイムに会うためにリヴァイアサンに変身し、現実世界へと消え去る。劇場版ではホーエンハイムと共に門の材料にされる。

グリード[編集]

強欲」の名を持つ人造人間。左手の甲にウロボロスの紋章を持つ。
体内の炭素の結合度を自在に変化させ、皮膚をダイヤモンド並に硬化させる『最強の盾』と呼ばれる能力を持つ。盾とは言うものの、その硬さは素手でコンクリートを引き裂く事も出来、防御だけでなく攻撃にも転用可能。身体の一部だけを硬化させる事も出来るが、防御力は全身を覆った方が高い。ただ、本人は「ブ男になる(スパイダーマンのヴェノムのような容姿)」という理由で、あまり全身を硬化させた姿になりたがらない。身体を硬化させるとほぼ全ての物理攻撃が通用しなくなるので圧倒的な戦闘力を誇るが、「硬化と再生を同時に行うことができない」「全身を硬化させるのに時間がかかる」など弱点はある。炭素を操ると言う仕掛けがばれて以降、エドには硬化するそばから炭素結合を操作され防御を破られてしまい、ブラッドレイとの戦闘では硬化による防御が間に合わないなど、最強の盾と言う割に他にも弱点も多い。普段の姿と盾を全身に覆った姿の、どちらが真の姿なのかは不明(リンと初めて対峙した時は盾を全身で覆った姿であったが、初代グリードが体を再生した際には硬化状態ではなかった)。
原作版では3番目に造られたホムンクルス。「ありえないなんて事はありえない」が口癖。己の業である強欲を満たせないとして、100年ほど前に「父」の元から離反。その後は、軍部の実験で合成獣となった元兵士達を主とした世間のはみ出し者達を集めて、ダブリスの「デビルズネスト」を根城に自由奔放に生きていた。しかしブラッドレイ率いる軍部のデビルズネスト殲滅戦にてブラッドレイに敗退し、「父」の元へ連れ戻され、再び「父」の下で働かないかと言われたが、己の業が満たされないことから拒否。ゆえに賢者の石に精製し直され「父」の体内に戻された。
その後グリードの賢者の石は余ってしまっていたが、ホムンクルス達のアジトに侵入したリンに「父」が「強欲」の賢者の石を注入。ラース同様の人間ベースのホムンクルスとして再び復活した。二代目グリードは初代グリードと魂は同一であるが、肉体が違うためか初代の記憶を持ち越してはおらず、今のところ初代とは違い「父」への忠誠心は失っていない。また「完全なグリード」であるとも言えず、リンの意識も残っている。そしてグリードはリンの志に僅かながら共感したり、リンはグリードに体の中から頼み事をしたりと、今のところ二人は妙に気が合っており、奇妙な友情めいたものが生まれている。
なお、初代グリードはドルチェットやマーテルなどの合成生物たちに対し仲間想いな一面を見せていた。
アニメでの設定
声:諏訪部順一
ベースはかつてダンテに恋心を抱いていた人間(素性は不明)。見た目や能力などの設定は原作と同じ。実験体としてダンテの人体錬成により誕生。ダンテとしては愛情を餌にコントロールしようとするも思い通りにならず、結果、封印される。その後、140年の封印を経て脱走し、原作同様に合成獣になった元兵士達を部下として行動する。最期は、ダンテの下に赴くも罠にはまって体内の赤い石を吐き出され、弱ったところをダンテを殺したと勘違いしたエドによって倒される。その際、心のどこかで死を欲していたのか、ホムンクルスの弱点をほのめかして息絶えた。

ラース[編集]

憤怒」の名を持つ人造人間。原作とアニメでは設定が違う。
原作では7番目に造られたホムンクルス。キング・ブラッドレイの正体。左目の眼球にウロボロスの紋章を持つ。
他のホムンクルス達とは違い、人間の体内に賢者の石を注入し、その高エネルギーに耐えた末に誕生した人間ベースのホムンクルス。ホムンクルス達曰く「最後の詰め」に用意された存在。他のホムンクルス達と比べると与えられた名に反して怒っているシーンは少なく、むしろいかなる状況でも冷静である。怒っているとみれるシーンでも憤怒というよりは静かな怒りや威厳と呼ぶ類の物である。また、(2代目グリードが誕生するまで)末弟のせいか、特にエンヴィーに小馬鹿にされることが多い。
ホムンクルスとしての固有能力は銃の弾道さえも見切る動体視力。「最強の眼」とも呼ばれ、戦闘時にはその眼で主導権を確保し、二刀流の剣術とホムンクルスの身体能力を生かした素早い動作で敵をなぎ倒していく。油断していたとはいえ、グリードに隙を与えずに倒すなど、その戦闘能力はホムンクルスの中でも高い。
人物像についてはキング・ブラッドレイの項を参照。
アニメでの設定
声:水樹奈々
アニメオリジナルキャラクター。ベースはイズミの子供。右足の裏にウロボロスの紋章を持つ。イズミの人体錬成によって生まれた後は「門」の向こうに送られ、その中で成長していた。
別の物質と融合することで、その能力を自在に扱うことのできる能力を持つ。門の中でエドが持って行かれた手足を発見しそれと融合、それにより人の形を手に入れ門から脱出する。他のホムンクルスと違い、常に素足である。また、ホムンクルスは錬金術を使えないのだが、エドの手足と融合した結果、ラースのみ錬金術が扱える。戦闘の際には融合の能力と錬金術を併用して高い戦闘能力を誇る。
門脱出後、しばらくイズミやエド達と暮らす。当初は純真無垢な子供そのものであったが、エンヴィーから紅い石を与えられ事実を知ってからは凶暴な性格へと変化し、ダンテに従うこととなる。弱点となるはずの遺品が、生まれて間もない死んだ赤子を代価として誕生したため、遺骨すら無い。しかし、赤ん坊の泣き声を聞くとトラウマが呼び起こされるのか錯乱する。
作中では与えられなかった母性を求めるかのようにスロウスを「ママ」と慕っていた(ただし、ホムンクルスとしての年齢は彼のほうがスロウスよりも上)。逆に本来の母親とも言うべきイズミをその生い立ちから怨んでいる。終盤で、スロウスはエドに封印されてしまい深い孤独感に陥る(この際、彼女の封印に手を貸したラストを封印している)。その後、スロウスを賢者の石で蘇らそうとしてダンテの怒りを買ったため、(エドの)手足を奪われる。結果として錬金術が使えなくなる。
「紅い石」を与えられたとはいえ、ベースとなる人としての姿はエドの手足によるものであったためか、手足を奪われた後も再生することはなかった。それゆえ最終回では、ウィンリィがエドのために造った機械鎧を付けてもらった。

スロウス[編集]

怠惰」の名を持つ人造人間。原作とアニメでは設定が違う。
原作では5番目に造られたホムンクルス。右肩の後ろにウロボロスの紋章を持つ。原作では筋骨逞しい体型の大男。ホムンクルスの特徴の一つである基盤模様が顔の右半分にまで伸びており、隻眼になっている。
性格はとにかくものぐさで、口調さえも片言。口癖は「めんどーくせぇ」。だが、彼もエンヴィー、グラトニー同様プライドの命令には(レイブン越しでも)逆らえないらしい。100年以上前から、アメストリス地下で穴(もしくはトンネル)を掘る役割を任されているが、サボり癖ゆえになかなか完成に至らなかった。その最中に地下施設から真冬のブリッグズ要塞に迷い込み、オリヴィエらの手により、揮発性の高い燃料をかけられた上で外に追い出され、凍結されていたがレイブンの手によって復活し、仕事を再開し、ついにトンネルを開通させてしまう。
現段階では真の能力は不明だが、単体で巨大かつ長距離なトンネルを掘り進むほどの怪力と、大量の砲弾を受けても傷自体がつかない強靭さを誇る。しかし動きはかなり鈍重で、グリードからは「のろま野郎」呼ばわりされていた。
アニメ版での設定
声:鷹森淑乃
アニメオリジナルキャラクターでベースはエルリック兄弟の母であるトリシャ(表向きには大総統秘書官ジュリエット・ダグラス)。左の乳房にウロボロスの紋章を持つ。
ホムンクルスとしての能力は身体の液状化。それにより、いかなる場所にも侵入でき、また戦闘時には自由に伸ばして敵を絡め取ったり、遠心力をかけることにより敵を粉砕するなどといった武器にもなる。また、直接攻撃を無効化できる。
性格はトリシャとは正反対に冷淡で、表情をまったく変えないがラスト同様に人間になりたいと強く望んでおり、そのためにダンテの命令には忠実だった。人格そのものはトリシャとは異なる(顔立ちもトリシャよりも大人びて、髪型も違う)が、トリシャの記憶が一部残っており、そのために自分が死んでいる事を自覚しかけていた。そのために、人間になろうとしているホムンクルスである自分と、既に死んでいるトリシャという二つの人格のジレンマを感じて苦悩し、エド達を倒すことでトリシャとしての自分を否定しようとした。
賢者の石となったアルを捕獲しようとエドと交戦。自分がトリシャに似ている事を逆に利用する狡猾な面も見せ、有利な戦いを展開するも、弱点であるトリシャの遺骨を取り込んだラースと融合されて動けなくなり、身体の全成分を揮発性の高いエタノールに再構築された。そして、最期はトリシャとしての言葉を残し蒸発したが、人格がトリシャに戻ったのか、それともトリシャの人格の言葉を代弁しただけなのかは不明。結果として、5年というホムンクルスとしてはかなり短い生涯であった。

プライド[編集]

傲慢」の名を持つ人造人間。原作とアニメでは設定が違う。
原作ではホムンクルスのリーダー格。最初に作られたホムンクルスであり、「始まりのホムンクルス」と名乗ることがある。普段の態度は一見すると紳士然としているが、その名が表すようにかなり慇懃無礼である。ホーエンハイムとの対峙より、アメストリスに築かれた錬成陣の円より外に出ることができない様子。
表向きの姿はキング・ブラッドレイ(ラース)の養子「セリム・ブラッドレイ」。親想いの心優しい少年で、見た目の年相応の行動を演じているが、本性はホムンクルス内で最もえげつないと称されるエンヴィー以上のサディスト
ホムンクルスの固有能力として影を自在に操ることができる(もしくは影その物が実体である)。この影は、触れたモノを切断、あるいは消滅させることが可能。また、リザに対して首を絞めるなどの行為を見せたところから、物理的な力を加えることも可能であり、影から影へ移動するなど、能力の凶悪さはホムンクルス達の中でも群を抜き、まさに七人中最強のホムンクルスである。この影は『真理の扉』の中で出現するモノに酷似しており、前述の切断或いは消滅も扉内部での現象に似ている。また、「フラスコの中の小人」としての初期の「父」にも似ている。後者は、この姿が「父」の「傲慢さ」そのものを表しており、それを分離して誕生したのがプライドであるとホーエンハイムは推測している。(曰く「名は体を表す。」)
作中ではホムンクルスとしてあまり目立った行動は少ないが、国家錬金術師の最終選定が彼とラースによって行われている、スロウスが掘る地下道に関してスロウス及び侵入者の監視、「父」の代理としてホムンクルス達の監督、命令などを行っていると思われる描写がある。特に最後に関しては、興奮状態にあるエンヴィーとグラトニーを屈服させるなど、「父」に次いで絶対的な権限を持っていると推測される。
エルリック兄弟やマスタング達の攻勢が続く中、特にリザに自らの正体を明かして脅迫。更にはキンブリーをも従えるなど、表舞台でも行動的になりつつある。
アニメでの設定
声:柴田秀勝
アニメにおけるキング・ブラッドレイの正体。ベースは不明。一応、こちらもホムンクルスの中ではリーダー格。
能力などの設定は原作のラースと同じだが、原作とは年をとるメカニズムが違い、(プライドに限らず)ホムンクルスは見た目を変えることができるという能力を使い、年をとったかのように見せていた。また、マスタング戦において正体を現した際、背中から基盤模様が伸びたことが確認できる。
ホムンクルス達の中でも最もダンテに忠実な部下として扱われ、彼女自身「傑作」と称する。アメストリスの事実上の元首に据えることで自身の目的を遂行しやすくしていた。
セリム(アニメでは普通の人間の子供)に弱点である自らの頭蓋骨を託すが、何も知らないセリムはそれをマスタングとの戦闘中に持ってきてしまう。激怒した彼は息子を縊り殺してしまうが、時既に遅くマスタングに頭蓋骨を奪われ動けなくなったところを、命が尽きるまで焼き尽くされた。

関係者[編集]

研究所実験体[編集]

スライサー(ナンバー48)
声:大滝進矢(兄)、坂口候一(弟)
元第五研究所死刑囚。日本刀に似た刀を使う二人一組の殺人鬼で、鎧の頭部に兄の、胴部に弟の魂が封じられている。最初に自らの血印を見せたときは頭部の兄のものを見せたため、エドは本体が頭であると思い込む。頭を弾き飛ばした時点で気を抜いてしまい、その隙に攻撃を受けてしまう。実は20代の故人で、「おっさん」ではない。エドを圧倒する鋭い太刀筋の持ち主。エドとの戦い敗れた後、主犯格をバラす寸前、ラストとエンヴィーに口封じのため、始末されてしまう。余談だが兄は猫派、弟は犬派らしい(おまけ4コマより)。兄弟がケンカになった際には、弟の一方的な暴行になってしまう。
原作の設定に従えば、魂のみの存在であるはずの彼らに記憶があり、人格を保っていたことを考えると、バリー同様兄弟の体はどこかしらで生存していたことになる。なお、設定の異なるアニメではこの限りでない。
アニメでは弟はエドから人間と認めてもらえた嬉しさから自分で血印を破壊し自害、兄は真相に近づいた所でラストにエドヘの見せしめとして殺された。
バリー・ザ・チョッパー(ナンバー66)
声:伊藤健太郎
元第五研究所死刑囚。中央で23人を殺した狂気の殺人肉屋。人間を切り刻むことに快感を覚えている。死刑を免れる代わりに鎧に魂を封じられ元第五研究所のガードマンとなっていた。アルと戦った際、彼の心にエドに対する疑惑を吹き込む。その後研究所を逃走。偶然襲おうとしたホークアイ中尉の強さに惚れこみ彼女を「姐さん」と慕い、マスタング大佐に匿われる。その後、「行動の自由を手に入れるためにはホムンクルス達を壊滅してもらうのが一番」と考えマスタング達に協力する。しかし合成獣の魂を入れ込まれた本来の肉体によって発見され、彼がマスタングらに手を貸したことに腹を立てたラストによって鎧の身体を切り刻まれ、むき出しになった血印を自分の魂の解放を望む肉体に壊されるという哀れな最期を遂げた。
実は既婚者であり、最初に殺した相手は妻でラストに似ていたらしい。また、『方法序説』の命題「我思う、ゆえに我あり」をもじった持論(「我殺す、ゆえに我あり」)を語っている。
アニメでの設定
アニメでは逮捕前の生身(生前)の姿でも登場。生前(三年前)は妻を殺した事を機に凶悪殺人鬼になっており、犠牲者のみならずエドとウィンリィも襲った。その事件もまたアニメ版エドのトラウマの一つである。エド・アル・スカーとの戦闘の結果、仲間であったウィルソンの錬金術の暴走に巻き込まれ、鎧の身体がバラバラになった後、スカーに踏みつけられ消滅した。
凶悪な連続殺人鬼でありながらどことなく愛嬌のあるお調子者だった原作と異なり、アニメでのバリーは傭兵として軍に(それもホムンクルス達の独断で秘密裏に)雇われ、イシュヴァール人を殺して回る殺人狂ぶりを前面に出された形で描かれている。また、アニメでは根本的に設定も異なるため、バリーの(魂を失った)肉体の方も登場していない。

初代グリードの部下[編集]

ドルチェット
声:松本保典
と人間で造られた合成獣で元軍人。犬との合成獣のため、性格は楽観的で忠誠心が強い。犬の能力として鼻が利き、足が素早い。武器は刀。決して弱くないが、戦った相手がエルリック兄弟やイズミというように極めて相手が悪く、負ける場面が多かった。デビルズネスト殲滅戦にて最期はブラッドレイ(アニメではグリード・マーテル・アルを追ってきたラストとグラトニー)に殺される。
アニメでは軍人としての経歴はロアやマーテルと共に特殊工作部隊に所属していたことになっている。
ロア
声:うえだゆうじ
(バッファロー)と人間で造られた合成獣で元軍人(イシュヴァール戦争時に一兵卒として参加しており、原作の第15巻で確認できる)でアームストロング少佐とは面識がある。牛に近い怪人体に変身できる。武器は大きなハンマー。肉弾戦を得意とするが足はそれほど速くない(ドルチェット曰く「鈍牛」)。デビルズネスト殲滅戦ではアームストロング少佐と互角に戦うが、最期はブラッドレイ(アニメではグリード・マーテル・アルを追ってきたラストとグラトニー)によって殺される。
アニメでは軍人としての経歴はドルチェットやマーテルと共に特殊工作部隊に所属していたことになっている。イシュヴァール戦の回想編では戦闘に参加している姿が見受けられる。また、怪人体への変化が角と声のみに変更され服を脱ぐ描写がなかった。
マーテル
声:笠原留美
と人間で造られた合成獣。元軍人でグリードの部下の中では唯一の女性。蛇の能力として身体の関節を自由にはずす事ができ、それを生かしてアルの鎧の中に潜り込んだ(以後アルの監視の役目を負う)。武器はナイフ。デビルズネスト殲滅戦にて最期はアルの鎧に入ったままブラッドレイに殺される。皮肉にも、彼女の血液がアルの「血印」に触れることでアルは「真理」での記憶を一部取り戻した。
アニメではデビルズネスト殲滅戦では生き残り、しばらくエルリック兄弟と行動を共にする。裏切ったキンブリーや仲間を殺害したブラッドレイへの復讐のために行動するも、原作同様アルの鎧の中でブラッドレイに殺される。その際、マーテルはアルに「大総統はホムンクルスである」と伝え、兄弟やマスタングらが大総統の正体を知るきっかけを作った。軍人としての経歴はドルチェットやロアと共に特殊工作部隊に所属していたことになっている。
ビドー
声:大川透
トカゲと人間で造られた合成獣。トカゲとの合成獣という体を生かして垂直な壁を登ることができる。作中では魂の錬成を確認するためにエルリック兄弟を挑発した。
デビルズネスト殲滅戦の際は、外出していたため唯一生き残った。その後イズミを訪ねて現れたブラッドレイの手の者を発見し、彼らを探るためこっそり車にしがみついて同行する。
アニメではキンブリーと行動していたが、爆弾に作り変えられそうになったため絶交した。デビルズネスト殲滅作戦で射殺される。
ウルチ
グリードの部下。ワニと人間で造られた合成獣。元軍人で女好き。イズミに鼻の下を伸ばして襲い掛かるが、シグに殴り倒される。デビルズネスト殲滅作戦で射殺される。

ライラ[編集]

声:かかずゆみ
アニメオリジナルキャラクター。錬金術師の少女でおかっぱ頭が特徴。紫色の瞳を持つ。
初登場時はユースウェルでヨキに仕えていた。国家・軍部に尽くし国家錬金術師になろうとしていたが、エドとの戦いで敗北してからは純粋に大衆のための国家錬金術師になろうと見つめ直し、ダンテのところへ弟子入りする。ダンテの元では前には見せなかった無邪気な笑顔を見せる等、とても充実した日々を送っていたようだが、師であるダンテに裏切られた挙句、生きたまま身体を乗っ取られてしまい、夢は途絶えてしまった(正確には殺されてはいないが、ライラの魂は乗っ取られた瞬間消滅したか、ダンテの魂と同化したと思われる)。
劇場版では、フリッツ・ラングの撮影所でお茶を出す女優として登場。この時の彼女は、エドに対して無愛想だった。

ロゼ・トーマス[編集]

声:桑島法子
レト教の信者。アニメ版ではダンテと深い関係の人物なので、ここに分類。
東方辺境の町娘。前髪がエドと似ており、彼と同じくアホ毛持ち。カラページでの登場はないが、原作のモノクロページを見る限りでは肌にスクリーントーンがあるなど肌の色が濃いような表現はない。昨年恋人を亡くし落胆していたが、恋人を復活させてくれるというレト教を信じていた。しかし、エド達によってコーネロの教えが嘘である事を知らされ失望。自暴自棄になりかけたところをエドに諭された。その後は立派に立ち直ったようで、暴動で壊滅寸前になったリオールで炊き出しのボランティアをしている。巻末のおまけ四コマでは国外に渡り、騎馬民族を率いて覇道を極めた事になっている。また、イラスト集の巻末おまけページでは女性キャラクターのみの集合絵があり、ここでは「レト教まんじゅう」を抱えたコミカルな姿で登場している。
名前の由来は、作者荒川弘が「酒屋のチラシ」で決めたと語っていることからロゼワインと考えられる。
アニメでの設定
アニメでは準レギュラー[3]。作中でダンテが「エルリック兄弟はロゼが好き」と言われる部分があるが、「異性としてでの事ではない」と後に監督が発言している[4]。浅黒い肌で、イシュヴァール人として設定されている(ただし瞳の色は紫色であるため、混血と思われる。リオール内乱の時、一度軍部へ連れて行かれた際に暴行され(この際、一番最初に暴力を振るったのはハクロ少将)、戻ってきた時には父親が誰かも分からない子を儲け、一時は言葉を失っていた(原作者はアニメ雑誌において、この展開に対し難色を示している)。その後リオールの町を錬成陣に賢者の石を造ろうと企てるスカーにカリスマ的人物に仕立て上げられ、人々に「聖母」として慕われる。
リオール消滅後、ダンテにより男に虐げられた心の隙間につけ込まれて洗脳されてしまう[5]。しかも、そのダンテの狙いはロゼの身体を乗っ取る事であり、計画通り身体を乗っ取られそうになったが、目の前で起こった(エンヴィーによる)惨劇のショックで正気を取り戻し、賢者の石が消滅したために乗っ取られることはなかった。
その後無事生還し、後日談ではウィンリィ達の家に居候、子供も成長していた。劇場版では復興したリオールの町に戻っている。

アニメとの差異考察[編集]

原作とアニメで設定が最も異なっているのはこのホムンクルスについての条項である。原作におけるホムンクルスは連載中の現在判明していることだけを取り上げると、創造主たる『父』なる存在の魂から、正確に七つの原罪の部分を賢者の石として抽出し、過去にも現在にも存在しない全く独立した「オリジナル人造人間」を創造、それぞれの名称においても抽出した原罪を正確に付名している。この場合の彼らは、自らのアイデンティティを迷う事無く創造主たる『父』に置き、ホムンクルスとして一般の人間に対して優越意識を持つ。アニメ版のラストが終盤にてダンテ側を裏切った一方、原作版のラストはマスタング相手に最期までホムンクルス陣営の尖兵として死闘を繰り広げたのも、この相違から来るものである[6]

一方でアニメのホムンクルスの場合、上記の通り、錬金術師達が様々な状況において失った人の復活を願って人体練成を行い、そこから生まれた"人の形をしていない"肉体に、命の集積体である紅い石を投与したものであるが、ホムンクルスの総括者たるダンテはあくまで最終段階の紅い石の投与のみを担い、出来上がったホムンクルスと「人間にしてやる」という約束を取り交わし、賢者の石探しに使役していたに過ぎない。従ってこの場合のホムンクルスは言わば「複製体としての人造人間」であり、核となる人物像は過去に実在し、それぞれの名称は人間の原罪と呼ばれる7つの人間の性質から、各個人の性格に最も近いものを付名したに過ぎない。

アニメにおいて実際その約束を期待していたのはラストとスロウスのみ(ラースは自らの能力で人間になろうと考えていた)であったが、彼女らの場合、やはり終盤においてコピー体としてのアイデンティティに苦悩している描写があった。この場合、まず統括者であるダンテに対する忠誠心がどこから発していたのか、限定的であるとはいえ練成対象となった人物の記憶を持ちながらも、自身のアイデンティティをその対象の人物と同一化しなかった[7]理由は何か、自分は人間でない、ホムンクルスなのだという猛烈な差異意識の自己認識があったのはホムンクルス生来から由来する認識なのか等、様々な疑問も残る。

以上のことから、原作版から派生したアニメ版のこの作品では、ホムンクルスについての内容を大幅に変更することによって、「人体練成と失った人に対する生きている人々の思い」を焦点として明示できる形となっており、その悲劇性を取り扱い、登場人物達のこれらに対する認識の仕方、及び行動、苦悩、そして結末の意義などを原作と異なる形[8]で引き出すことに成功していると言える[9]

注釈[編集]

  1. 本来の姿に戻った後は変身能力を使わず、グラトニー並みの力任せの攻撃を続け、エドとの利害一致で真理の扉を潜る際もそのままの姿だった事から、一度この姿に戻った後は暫くの間他の姿に変身できないと推測され、この点もこの姿になりたがらない要因の一つと思われる。
  2. ホーエンハイムが肉体を入れ替えていたことから、血縁上の繋がりは全くないとされる。仮に血縁関係があるとすれば異母兄弟。
  3. キャラ紹介として「準レギュラー」と紹介されていた。また、原作と比較して出番などがもっとも異なるキャラクターである。一部のファンからヒロインと言われる事があるが、某雑誌のインタビューで脚本家・會川昇が「アニメ版のヒロインはアル」だと発言しており、監督・水島精二は「ウィンリィがヒロイン」と断言している。
  4. ダンテはウィンリィの存在を知らない為。だが、その際の異常な素振りからファンからは「ロゼを好きになったのは自分(ダンテ)の方なのでは?」という声もある。
  5. 洗脳時は虚ろな目をしていたが、記憶や意志がないと言う訳ではなく、ダンテには自分から擦り寄るなど完全に彼女に気を許し、恋人のような関係になっていた。
  6. グリードの場合はアニメでも原作でもホムンクルス側を裏切って独立して行動しているが、それもアニメではグリードの性格がたまたま裏切りやすい性格だったに過ぎないのに対して、原作の方は父の魂から抽出された己の業である「強欲」に忠実に行動した結果としての裏切りであり、裏切りに至るまでの理屈が全く異なる。
  7. ホムンクルスではあるが、イシュヴァールの女やエルリック兄弟の母親としての生を得ることをしなかった
  8. 原作の方では、どちらかというと人体練成の罪科よりも「失った体を元に戻す旅」の物語という、いわゆる『旅物語』というコンセプトを強調して作品が編集されている。
  9. もう一つ、アニメ版で焦点として取り扱われている(特に第1~2期において)主題として「冷酷で強圧的で一方的な軍・政府と不条理に虐殺される少数民族、それに反発するエド達大衆の味方」というヒエラルキー闘争を肯定的に描くというものである。詳細は軍部参照。

関連項目[編集]

テンプレート:鋼の錬金術師